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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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2.5(木)読了
エッセイ集。あいからわずさまざまなことに手を出している真理子嬢を垣間見ることができる。
語学勉強について何篇か書かれている。林氏は英語、イタリア語、フランス語などを勉強するのが好きなのか、いろんな教材(ベルリッツの20万円もする教材セットなど)を購入しては、ちょっとやってみてすぐに飽きる人のようだ。いわゆる3日坊主というやつだが、こういう人は非常に多いと思う。

それにしても、なんで外国語を勉強したいのだろうかと、エッセイを読んでいてふと思った。
一般的な日本人は、中学校以降に英語を習いはじめる。中学校から始めて高校、大学と勉強した場合、足掛け10年間も英語を勉強することになる。それだけ時間をかけて、英語を喋る機会がどれほどあっただろうか。皆無とまではいかなくても、ほとんどなかったと思う。英語が必要なレアな機会に恵まれたとしても、せいぜい中学校レベルの英語をなんとか並べ立てて、しかもそれで案外用が足りたりもする。
高校のときに、外国人から英語で話しかけられたことがある。どうやらO大学への道順を聴いているようだ。
受験期ということもあり、今よりも多少は英語を理解できた私は、意気揚々と道順を教えてあげた。だけれども、なぜか相手に通じない。おかしいなと思い、彼女の顔を見ると、どう見ても英語圏の人ではない。聞くと、Chineseと返ってくる。来年からO大学で勉強することになった留学生だという。
結局、漢字の筆談で道順を教えてしまった。だって、そのほうが早くて解りやすかったんだもん。

膨大な時間を割いて勉強したモノが、実際には膨大な時間の無駄使いでしかなかった・・・・・・こう考えると萎えるものがある。文字通り、語学勉強は「夢中」で頑張るのがいいようだ。
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2.4(水)読了
新撰組の吉村貫一郎の生涯にスポットをあてて、新撰組の変遷や時代の流れを描いている。
新撰組といえば、近藤勇、土方歳三、芹沢鴨、沖田総司、斉藤一、永倉新八などが有名で、これらの人物を中心に語られることが多いなか、吉村貫一郎という人物はほぼ無名と言ってもいいと思います。私もこの本を読むまでは知りませんでした。
吉村貫一郎は南部藩の生まれで、剣術と学術に秀でた文武両道の才子でした。しかし、足軽の子という出自のため、二駄二人扶持(年16俵)という薄給に喘いでおり、妻子を養うこともできずにいました。おりしも時代は天保の大飢饉、吉村の妻は身重の自分をはかなみ、自殺の手前にまで立たされました。そこに至って貫一郎は南部藩を脱藩、京都に出て新撰組の門を叩きます。
貫一郎は剣術の腕前と学術ともに見込まれ、出世を果たします。年80俵も貰える身となったときには、隊士達の面前にもかかわらず涙を流さんばかりの喜びよう。そして給金はすべて実家に送金する。そんな貫一郎の行動は隊員たちに奇異に映り、変人呼ばわりされたり、軽く見られたりしていました。
御一新後の官軍との戦いで新撰組は旧幕府軍として参戦し壊滅。貫一郎は脱藩した南部藩の大坂長屋にたどり着き、帰順を申し出ましたが、そこで下された沙汰は「切腹」でした。長屋内で貫一郎は見事に切腹をします。

貫一郎の一人語りと、大正期以降まで生き延びた、新撰組隊員たちの昔語りを交互に交えて、新撰組と貫一郎の生涯を描いています。
460ページと少々長いですが、重厚な文章と興味深い内容で、一気に読むことが出来ます。下巻も期待できそうです。
2.2(月)読了
近未来物語。青少年の自殺改善策の研究の一環として、国に選ばれた幼児は心臓手術を施される。スイッチを押せば心臓が止まるというなか、独房に押し込められる。そのようなストレス状況下において、子供はどの段階でスイッチを押すかという国家の実験。そのようなテーマで一本の小説を書いている。

面白そうな題材なので読んでみたけれど、最初の2、3ページで放り出しそうになった。

①文章がとてつもなく下手。そこらへんの高校生が頑張って書き上げた小説のよう。
②どうでもいい不要な会話が多すぎる(「あ、ああ」「はい」「うん」←こういうのは端折るべき)
③生活内容をべったり書いている。場面展開がおそろしく下手(例:食事を摂ってトイレに行った。)
④悲劇的に語彙が少ない。
⑤登場人物の行動に常識がない。特に主人公の性格・行動は破綻している。精神病と断言できる。

挙げたらきりがないけど、特に①の文章が下手については致命的。
山田氏が25歳の時の作品だそうですが、平均的25歳よりも下手な文章だと思う。文章スクールに通って基本的な文章作法を習ったほうがいい。

処女作の『リアル鬼ごっこ』も低レベルな作品だった。個人的には1次選考通過がやっとというレベルだと思う。この作品はそれに輪をかけて酷い。日本で最も稚拙で下手な作家といっても過言ではない。読んでいて苦痛だった。我慢して最後まで読みきった自分を褒めてあげたい。
2.2(月)読了
エッセイ集。1993~1994年に書かれたもののせいか、近年の文章と違い硬派な感じがする。普通の文章というか、ちょっとユーモア不足かな、といった感じ。出版社の要請や掲載紙によって使い分けしてるのかな(あとがきを見たら、朝日新聞の家庭欄ということで、なるほどと思った)。

女性の権利やフェミニズムチックな題材が多いのも特徴です。その反面、林真理子おとくいの食べ物に関する記述がほとんどない(皆無)。時代の要請っていうやつでしょうか。
1993年といえば、社会党の土居たか子が牽制を振るっていた時代(おおげさかな)なので、その手の話をすれば耳目を集められたのかもしれない。

林真理子さんは結婚して夫の姓に変更したので、林真理子というのはいまやペンネーム(旧姓)なのだそうです。姓が変わって書類変更の煩雑さをエッセイに書いていますが、それならば別姓にすればよかったのに、と思ってしまいました。
そう簡単にはいかないのかな。

2.1(日)読了
精神病院を舞台として、さまざまな事情から入院・通院している患者たちの人間ドラマを描いている。山本周五郎賞受賞作。

帚木氏自身が現役精神科医ということもあり、患者たちの事情や病棟内の様子なども地味ながらリアルに書かれています。主人公格の人たちは軽い知的障害であったり、転換発作で母親殺し、家族殺しであったりします。
そんな「普通」ではない人たちが一所で生活しているので、秩序も何もあったもではないと思うでしょうが、そんなことはありません。奇異な行動をする人ももちろんいますが、それでもある秩序によって生活様式はなりたっているようです。

さて、この物語は一人の中学生の少女を中心に描かれているといってもいいでしょう。なぜなら、主人公格の男性――60歳前後の彼らですが――は、皆その少女に恋をしてしまうからです。正面だって好きだ! とは書かれていませんが、くどいように何度も「島崎さん」という単語が出てきます。なんとなく切なくなります。

ラストは、その少女を辱めた元暴力団員のヤク中の男を、主人公格の男性が仇討ちとして殺害します。そして裁判。殺人が悪いことは言うまでもありませんが、その心は清し、と思ってしまいます。

特に盛り上がったり、アッというどんでん返しがあるという訳ではありませんが、深い人間ドラマで読ませています。

1.29(木)読了
明治維新前後を舞台として、維新に置き去りにされて武士たちを、武士道という観点から眺めた作品。短編6作からなっている。

時代の移り変わりに抵抗する武士の心情がよく描かれているし、身命を投げ打ってでも殿に尽くそうという気概のようなものも、ひしひしと伝わってきます。
明治初期まで仇討ちは武士の誉とされていたようで、13年も主君の仇を追い続ける男の話なども出てきます。現代では殺人は完全な”悪”とされていますが、そうとばかりも言い切れない時代が長くあったのも事実です。明治憲法の発布により仇討ちは重罪と規定されましたが、そのこと一つをとっても時代が移り変わったことを感じさせたことでしょう。

6篇すべてが高いレベルで書かれています。短編を書かせたら浅田次郎は天下一品ですね。
最初から最後まで計算ずくで作成されている感があり、無駄な箇所がほとんどないというのが素晴らしい。佳作です。

1.28(水)読了
恩田陸の処女作にして、第三回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作。
ある県立高校で語り継がれている噂がある。毎年『サヨコ』という人物を校内からひとり定め、その人物は文化祭で演劇を演じなければならない、というような内容だ。演劇が成功すれば、その年のその高校の受験結果は最良のものとなり、失敗すれば最悪のものとなる。
3年生になった春、その高校に津村沙世子という美しい女子生徒が転向してくる。その年の『サヨコ』は加藤という男子生徒だったが、なぜか津村も、『サヨコ』の証である鍵を持っている……。

ファンタジーと言えなくもありませんが、青春ホラー小説と位置づけたほうが適切でしょう。
率直な感想を述べると、おもしろくない。
三人称多視点で書かれているのですが、いきなり視点が飛んで戸惑います。誰が主人公なのかも解りづらい。致命的なのが、神の視点のように書かれた文章があちらこちらで散りばめられていることです。混乱を通り越して白けてしまいました。読者を混乱させるために、意図的に視点をバラケさせているのかとも思ったのですが、そうでもない。小説のセオリーを無視しまくっています。

もちろん、面白ければそれでいいのですが、内容的にもいまいち面白くない。
文章や会話の幼稚さ、ストーリーの稚拙さは素人と言われてもしかたがないと思います。本編と関係のない余計なシーンや会話も多くあり(50ページくらい削除したほうがいい)、読んでいてイライラする。どうしてこの作品が最終候補にまで残ったのだろう、とクエスチョンマークが頭をよぎります。

背表紙に「伝説のデビュー作」と書かれていますが、??? 駄作(ごめんなさい)だと思うのですが……。恩田さんの本とは相性が悪いのかなぁ。
1.27(火)読了
吉川英治文学新人賞作品。
大企業社長の長男坊は18歳で自殺、次男坊の主人公と母親は家を出てともに暮らし、三男坊が父の後をついで副社長となる。
次男坊は小さな衣服店で働いている。安い着切れを無料同然に仕入れ、専属デザイナーの女性に服をデザインさせて、それを地下鉄沿線の会社に売り込むという仕事だ。毎日六百数十円の地下鉄一日乗り放題切符を購入し、仕事に励む。
ある日、地下鉄の階段を上がったところで妙な光景に出くわす。店も古く、辺りの様子もおかしい。どう見ても、30年前の光景である。信じられない思いで歩いていると、30年前に自殺した兄とばったり出会う。その日は兄が自殺した日の夜だったのだ。

地下鉄を舞台に主人公とヒロインがさまざまな時代の過去へと遡り、秘められた真実と向き直ります。ラストは納得のいかない終わりかたでしたが、そこに至るまでの過程や複線は素晴らしく、浅田次郎ワールドというべきものが広がっています。

浅田氏はこの著作の後、『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞を受賞されています。彼にとって鉄道というのはターニングポイントなのかもしれません。
10年近く前に読んでみて、この作品がなぜ直木賞を受賞したのかわからない、という感想を抱いたのですが、今読んだらまた別の感想を持つかもしれません。機会があったら再読したいと思います。
1.26(月)読了
林真理子のエッセイ。いつもながらライト感覚で書かれています。
今回は食べ物の内容が減って、講演やモンゴル旅行に行ったことについて紙面が割かれています。
この本は1999年に書かれているのですが、妊娠したことをマスコミに書きたてられたことについて、「並みの神経ではもたない」と憤っていました。いち小説家が妊娠したことがそんなに騒ぎたてることだろうか、と不思議に思います。

それにしても、忙しいせいか、林真理子のエッセイは間違いが多いようです。「日大経済学部卒業」と書かれていた有名人が「青学法学部卒業」だったり。うろおぼえの内容をそのまま書いているのでしょうか。他人の経歴を間違えて書くって、とても失礼なことだと思う。ちょっと調べれば正確に書けることなのに。

しかしまぁ、これだけエッセイを書いていてよくネタが尽きないものだと感心します。原田宗徳のように、同じネタを何度も書くわけでもないのに。
やはり常日頃からがしがし外出して、アンテナを張り巡らせているからでしょうね。そうでなければ量産できない。感心してしまいました。
1.24(土)読了
 身元の正しい人々が集って普段人に言えない秘密を打ち明けるサロン、沙高楼。主人公は美術館の刀剣を眺めていると、昔馴染みの刀工匠に出会い、その場所に連れていかれる。そこで語られた5人の話はいずれも奇妙だった。

5人の男女がそれぞれ秘密を語り合います。計5話の短編集ともいえるでしょう。
いずれの短編もすばらしい出来で、読んでいておもわずゾッとしてしまいました。じわじわと迫ってくるホラー小説といえます。
3人目が語った「立花新兵衛只今まかり越候」、5人目のヤクザの大親分が語った「雨の夜の刺客」が特に秀逸です。前者は幻想的、後者は事実を訥々と語って、いかにもありそうな話だと思いました。

浅田次郎の作品は「シェエラザード」「蒼穹の昴」などを読んできましたが、それに勝るとも劣らないできだと思います。この人は昔、ヤクザの企業舎弟をやっていたことがあるそうで、その辺の事情も堂に入っています。お勧めの一冊です。まだの人はぜひご一読を。


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