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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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11.11(火)読了
6篇のオムニバス形式の短編集。
今回は風俗ユーモア小説ふうになっています。早い話がエロ。

どの作品も面白く、ついつい引き込まれて一気読みしてしまいました。
誤植を1箇所発見。年齢設定が50代前半なのに41歳と記述されているエロ作家さん。そういうこともあるさ。

奥田氏の書き出しの特徴として、主人公の年齢性別職業などの個人情報を一番最初にバーンと出すというものがあります。これはどの作品においても、ほぼ不変です。
人物のプロフィールをいつの段階で記述するのかは結構悩むものですが、こういうふうに定型化すると楽かもしれません。
「城田宗彦は35歳の会社員。冴えない風貌で満員電車に乗りこんだ。」とか。

ちなみに題名の「ララピポ」というのは「a lot of people」 のことです。
たくさんの人、縺れ合って物語をつくっていく、いいですねぇ。ナイスな題名です。

さあて、奥田氏の作品もだいぶ読み終わりました。長編物はあと1、2作あるくらいかな。
この人の本、面白いので、全部読んだら次は誰の本を読もうと、ちょっと悩みます。
久しぶりに古典にも手をだそうかな、とも思いますが、戦前のモノってあまり面白いと感じたことがありません。特に邦本は。

誰かオススメの本を教えてくれないかなー、と思う今日この頃です。
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11.11(火)読了
短編集。5編からなっています。
今回は会社で働くサラリーマンを題材としたユーモア小説です。もちろん伊良部一郎はいません。
5編すべてが営業課なのは、奥田氏が広告業で営業をしていたからでしょう。
サラリーマンの悲喜劇がユーモアを交えて上手く描かれています。

内容的にはなかなか面白いです。奥田氏の作品としては中の中といったところでしょう。
でもやっぱりユーモアものを書かせたら天下一品ですね。
『最悪』『邪魔』といった本格物も秀逸なので、最高級の両刀使いといったところでしょう。

ちょっと考えたのですが、奥田氏がホラー小説を書いたら面白いのではないかと。
『ウランバーナの森』では心理描写で少しホラーっぽいところがあったので、それをもっと怖くしたら面白いものができそう。ぜひ書いて欲しいところです。
11.8(土)読了
奥田英朗の第3作目。450ページ2段組の長編犯罪小説。
会社の商品の横流しを隠すために放火をおこなった会社員。それがもとで、
平凡な家庭がもろくも崩壊していく。
会社とヤクザと刑事の3者が織り成して物語が進行する。放火犯の会社員の妻はパート先で共産党関係の運動に参加。いいように使われて、周囲との軋轢を生む。夫とは離婚を決意し、子供たちを犯罪者の子にはしたくない一心で、夫のアリバイ作りのために放火。はずみで刑事を刺してしまう。

ストーリー展開は、前作『最悪』と同様に3者の3人称方式で進行していきます。
短い文章で淡々とセンテンスを重ねるのが、奥田流です。描写力もすばらしく、読んでいて気持ちいいです。

ストーリー関係でひとつ不満なのは、九野刑事の義母の存在です。
数年前の事故で彼女は死んだということになっているのですが、その理由も、現在の義母が誰であるのかも書かれていません。義母の不動産を不動産屋が問い合わせてきたという事実も、意味のないものになっています。
致命的欠陥というわけではありませんが、他がかなり良い出来であるだけに残念です。

全体的にみて、傑作の部類に入ると思います。社会派の作品を書いたらピカ1ですね。おすすめ。
11.5(水)読了
元長野県知事、田中康夫のデビュー作。文藝賞受賞作。
1980年代に生きる、物質金銭的に満ち足りて、「なんとなく」生きている大学生を描いています。
引っかかりがなく、つかみ所のない文体で、「なんとなく」という気だるい雰囲気がよく伝わってきます。

この本は、雰囲気を読むものであって、内容はあまり重要でないと思います。
私は詩を詠むように、流れるような文章の妙を楽しみました。
ちなみに内容は、男と女がそれぞれ生きている、それだけです。まったくおもしろくありません。

これを大学在学中に書いたというのですから、すごいと思います。
20歳にして自分の文体を身につけていたのですね。
こういう文章の本はあまり読んだことがないので、とても新鮮な気持ちになりました。
11.4(火)読了
ショートショート集。
この本は市のリサイクルショップで無料でもらいました。時間がなかったので、適当に選んで持って帰ってきたうちの1冊です。

中ごろまで読み進めていて「んっ?」と思いました。以前読んだことのある内容です。
それは「亭主調理法」という、腹立たしい亭主を殺してハンバーグにしてしまうというブラックユーモアです。調理本のような書き方で人間を料理するという内容が妙に怖くて、ずっと心に残っていたのだと思います。

いつ読んだのかと記憶をたぐってみたのですが、どうやら小学校高学年、11歳前後のようです。
土曜日の夕方に居間で寝転んで読んだ記憶があります。そのときもこの話を読み返したはずです。シーンとともに覚えています。
そんな昔の記憶が鮮明に残っているのに感動したと同時に、子供の頃に読んだ本は身につくのだなぁと感慨をおぼえました。

いつもならふいの再読を時間の無駄と思ってしまうところですが、今回はほのぼのとしてしまいました。
こういった再会もいいものですね。

11.3(火)読了
第12回日本ホラー小説大賞受賞作。
異境の世界である「夜市」に入り込んだら、何かを買わなければ元の世界に戻れない主人公の男とガールフレンドは2人で「夜市」に入る。実は男性は2度目の進入だった。
男性が夜市に来た理由は、かつて夜市で人攫いに売り飛ばした、弟の救出だった。

80ページ弱の短編です。
発想と叙情的な雰囲気が良く、最後まで読ませる作品だと思いました。
ただ、大賞受賞はどうだろう。選評者の3氏はこぞって賞賛しているが、正直、佳作くらいではないかと思います。

書き下ろしで掲載されている「風の古道」。
現実世界から隔離されている「古道」に入り込んでしまった主人公とその親友。
設定は「夜市」と似ています。物の怪が出現するというのも同じ。作者は、ひとつの世界観を作り上げているようです。

内容的には「夜市」には及びません。
雰囲気は良いのですが、ストーリー性が少々弱く、オチも弱い。もうちょっと捻りが欲しい作品でした。

11.2(日)読了
元過激派を父親に持つ小学校6年生の主人公。父は物書きを、母は喫茶店を経営して生計を立てている。
年金徴収人や小学校教師と揉め、居候の男が派閥争いの結果、殺人を犯して懲役刑になる。父親もその煽りを受けて、取調べを受ける。嫌気がさした父親は、家族総勢で、故郷でもある西表島に移住することになる。

島では、伝説の活動家にして、大昔の島の英雄「アカハチ」の子孫とということで歓迎をうける。
廃村の打ち捨てられた一軒屋をひとつもらい、そこに住む。食料や生活用品は、島の人が好意で持ってきてくれる。相互扶助が当然の島なのだ。

主人公も5人だけの小学校に通い出して、居心地の良さを感じる。生活が軌道に乗り始めたころ、不動産屋がやってくる。リゾート開発のため、立ち退き要求をだされる。
父親は資本家と政府が嫌いというアナーキストを全開して、断固として拒否。マスコミが嗅ぎ付けて、連日ニュースを賑わすことになる。

東京に残った姉もやってきて、家族4人と島の人も一緒に戦ったが、結局は警察に捕まってしまう。両親は取り調べの最中に逃げ出し、船で南の誰も知らない幸福の島へと向かう……。

530ページを超える長編。前半が東京編、後半が西表島編となっています。
最初から最後まで飽きずに読ませます。主人公の男児が立ち読みする「あしたのジョー」が最後の複線になっているなど、ストーリー的にもおもしろい。

『最悪』と甲乙つけ難いけど、あえて『サウスバウンド』に軍配をあげます。
読んでみて損はない出来です。お勧め。

10.29(水)読了
涼宮ハルヒシリーズ第9巻。
今回から新キャラがぞくぞく登場してきます。
超能力者の藤原。未来人の橘京子。新ヒューマノイドインターフェースの周防九曜。そして、キョンの中学生時代の友人(女)にして神候補であったという佐々木さん。

前お3方は、世界を安定させるために佐々木さんを神にしようともくろんでいる。そのため、キョンと接触してくる。
一方、キョン側の3人は、簡単にいえばその3人と敵対関係にある。

新学期に入ったからかネタが続かないからか、ついに敵対勢力を投入してきましたな、谷川氏。
ついでに言うとこの巻、途中から物語が2つに分岐しています。
次巻(涼宮ハルヒの驚愕)に続く、とあるので、第10巻で種明かしということでしょう。

ところで、現在刊行されているのはこの9巻まで。
10巻はとうの昔(1年以上前?)に書きあがっており、刊行しようと思えばできる状態にあるそうですが、営業戦略上の要請により現在まで発行停止状態。
なんでも、TVアニメ化第2弾に併せて刊行する予定だとか。

いやいやいや、次巻に続く、でそれはないでしょう。
発刊された頃にはこの物語の内容は雲散霧消しており、再び9巻を再読しなければならないという、超面倒くさいハメになる。
なんて不親切かつ読者離れを生むような行為を……。
読者はそこまでバカじゃないぞ。読者の反感を買うぞ。人気、地に落ちるぞ。

さて、お怒りモードの私。
問う、10巻はいつ発刊されるのですか。
特段読みたいわけでもありませんが、せっかくここまで読み進めてきたのです。
記憶の新しいうちに刊行してください。立ち読みします。

10.28(火)読了
短編6編。
主人公の男性が大学浪人のために名古屋から東京に出てきたところから、就職した広告代理店、独立開業に至るまでを描いている。

おそらく、この主人公は著者自身の体験を元に再構成したものだと思います。年代的にも1980年代ということでマッチしているし。違ったらすみません。

主人公の久雄という人物については、少々鼻持ちならないところがあると思いました。
彼は大学を中退して広告代理店に就職しますが、それなりに有能であり、21歳の若さで部下を持ちます。その部下2人は要領が悪くてうまく仕事をこなせないのですが、それを見て久雄が説教をします。
説教は当然ですが、それをネタにして、クライアントと笑い者にする。読んでいて気分が悪くなりました。

純粋に本の内容については、可もなく不可もなくといったところ。青春小説のような感じ。いままで読んだ奥田作品のなかでは、
一番おもしろくありませんでした。読後感、個人的に悪し。

同時期に書かれた『最悪』はもとより、『ウランバーナの森』よりもはるかに下の水準にあると思います。といったら言い過ぎか。

10.27(月)読了
涼宮ハルヒシリーズ第7巻。400ページを超える長編、時間もの。
今回も時間が飛びかいます。掃除用具入れから朝比奈みくるが出て来たり、山中で宝探しをしたり、亀を川に逃がしたり、男性を病院送りにしたり、バレンタインチョコをもらったり、福は外で豆を投げたり、みくるに巫女装束を着せたり、エトセトラ。
とにかく長い一巻でした。

時間についてちょっと。
朝比奈みくる(大)は、未来から過去に干渉して、過去を上書き消去できるというような意味のことを示唆していましたが、物理学的にいったらこれは間違い。
未来から過去に干渉できる、は異論ありません。できると思います。問題は、過去を上書き消去できるという部分。

平行宇宙論的に考えると、無限に存在する過去の中から、そのうちの一つを選択するというのが正解。上書き消去ではなく、方向性を定めるのです。
決して消去はされません。消去されたと感じるのは3次元限定の狭い視野であり、より高次元から俯瞰すれば、過去および未来の方向性はすべて存在したままです。個々人および集団による選択によって過去および未来の方向性が変化することはあります。そのすべての情報は、アカシックレコードという情報端末にインプットされています。これが長門の親玉である、情報統合思念体のことですね。

もっとも、谷川氏もそのことは十分解っていると思います。話をおもしろくするために、わざと理論を作りだしているのでしょう。

次はついに現在刊行されている第9巻。
はーあ、ついにここまでたどりついたか。心して読みましょう。


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