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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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4.16(木)読了
ある老人が刑務所の雑居房に入ってくる。その老人の正体は、かつての仕立て屋銀二の孫分の大物泥棒。空き巣多発地域においての知恵を借りるために、警察に請われてやってきたのだ。老人は独居房で囚人たちに昔語りを始める。皆老人の半生に耳を傾け、感心したり改心したりと大変な騒ぎとなる。

老人が語るのは、大正年間の粋なヤクザ者の話。老人を語り部として、浅田氏得意の時代物が5編収録されています。ちょっと能や歌舞伎の世界が入っているのか、老人は講談口調でテンポよく話を進めていきます。

仕立て屋銀二って本当にいたんですかね? その辺の話ってほとんど知らないけど、この本を読むとなんとなく人物像がつかめてきます。義の人という感じでしょうか。スリや盗人といえども、このくらいの人になると素晴らしい人格(語弊かもしれないが)を持っていたようです。
ヤクザ映画をみているような本でした。

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4.14(火)読了
妻を殺された主人公が、殺した男性の父親が社長の会社に就職する。その会社は麻薬を売りつける、いわゆる非合法の会社。息子を殺そうと機会を窺う主人公。だが、息子は何者かに「押されて」交通事故で死んでしまう。「押し屋」という競合会社の刺客だった。主人公は「押し屋」を追っていくが、その折に「自殺屋」「殺人者」などの競合会社の刺客と絡み合っていく。

タイトルのグラスホッパーとはバッタのこと。バッタは群れて暮らしていると、色が茶に染まり凶暴になるのだそうです。
人間も昆虫のようなもので、人間も群れていると――つまり都会に住んでいると凶暴になる、そのように「押し屋」は語ります。なるほど。
物語の端々に「罪と罰」の文庫本の記述があります。人間はどう生きるか、ということと関連して紹介されていますが、作品のテーゼとしても使われています。逆から読むと「唾と蜜」は新発見。いい感じです。

伊坂氏の作品はきっちりと作られている感じですが、特に面白いとは思えません。可もなく不可もなくというか。もう少し遊びに文章というか、余裕をもって書いてほしいなと思います。
『アヒルと鴨のコインロッカー』という本を借りているのですが、読むのに躊躇してしまいます。長いので。
4.12(日)読了
小説を書くための指南書。
大学で小説ゼミを受け持っている経験から、小説作りで学生たちが悩んでいる場所、躓いているところをまとめて、一つ一つに答えています。

小説の具体的な書き方を「お題」として指示しているのも本書の特徴です。
たとえば、コップを目の前に置いて、文章のみでその描写をする。
外を歩いている人物の描写をする。日常生活や夢の中の出来事を描写する、などです。
小説とは文章のみで相手に伝える技術ですから、うまく伝えられなければ意味がない、もしくは駄作になってしまう。そのための練習は欠かせないということですね。

いまさら聞けない30の質問! というコーナーもあって、原稿の使い方や新人賞への送付のしかたなど、超基本的なことを教えてくれています。これはありがたい。

最後に氏は、作家の才能とは書き続けることができる才能である、と言い切っています。
どんな人でも10年、20年書き続けれていれば作家にはなれる、と。なるほど。
高橋克彦氏の本(だったかな?)には3年頑張ってダメだったら諦めた方がいいという内容が書かれていたと思うけど、人によって見地はそれぞれですね。
努力したから報われるわけではないが、努力なくして報われない、ということでしょうか。
4.10(金)読了
ラーと呼ばれる上の次元からのチャネリング本。
1981年の約1ヶ月間になされたチャネリング情報が載っています。

訳にやや難があります。原文を忠実に訳しているのか、全体の文章が硬直化していて、理解を難しくしています。できればもう少しわかりやすい文章に書き換えてくれたら、内容理解もスムースにいくと思います。

情報は多岐に渡っていて、ラーという存在もそれに対して誠実に答えている印象があります。ちょっとエドガーケイシーのチャネルする存在と似ていると思いました。
久しぶりに精神世界の本を読んだのですが、なかなか面白かったです。
良いことがたくさん書かれています。嘘か本当かの詮索はあまり意味を持たないでしょう。
形而上の世界に興味を持っている人は読まれてもいいと思います。
4.8(水)読了
エディプスコンプレックをモチーフとした青春小説、下巻。
父親を殺して母親を奪う。主題として超古典的内容ではある。
題名にもあるようにフランツ=カフカの文章をイメージしたようだ。一人称の僕が行動する展開では、抒情詩のように流れる文章が続く。情景描写も同様。そして文章の語尾が(僕の視点では)ほぼすべて現在形、もしくは現在進行形というのも特徴。

文章自体は綺麗でさすがと思うのだが、風景描写や情景描写が多すぎて途中でうんざりしてしまった。そういう箇所は結構読み飛ばしてしまったし、読み飛ばしても内容理解にはあまりさしつかえない。もう少し短くしてほしかった。カフカを真似しすぎ。

ニューエイジ思想や哲学的な考え方、内容そのものも夢や比喩、死後の世界などを取り扱っていて、良くも悪くも非現実的なつくりになっている。悪くはないが、ちょっと解りにくい。理解できたようなできなかったような、読後の印象はそんな感じ。
まぁ、青春小説ですね。
5.12(火)読了
手づくりワインの参考書。
ワインの酵母から温度管理、ぶどうの品質・銘柄など必要充分な内容が書かれています。

どぶろくを造ろうと思って(1%以下のです笑)図書館を探したのですが、残念ながらそれらの本はありませんでした。代わりにこの本を借りたというわけです。
ワイン作りも酒造りも似たところがあります。簡単にいえばワインは果汁(糖)と酵母を混ぜていればできます。酒は米のでん粉を分解して糖分にするために麹を投入して、あとは酵母を入れておけばいい。酵母が糖分を分解して、熱と二酸化炭素とアルコールができます。

ちなみに酵母は、家にあるイースト菌でもOKです。本格的にはワイン酵母や清酒酵母などがあるのですが、パン酵母でもそれなりにできるようです。さっそくまぜまぜ……。
100%ぶどうジュースにイースト菌を投入して砂糖100グラムを入れて混ぜたら、盛んにあわ立ってきました。1日半後が発酵のピーク。部屋中ワイン(糖?)臭くて眠れない。寝不足。
翌日見てみると、まだ泡がでている。無事に出来上がりそうです。たのしみ。

4.6(月)読了
15歳の誕生日の夜に家出をした「僕」。係累のまったくない土地、高松へ。私設図書館に通ううちに、そこの司書と仲良くなり、図書館の一室で寝泊りさせてもらうことになる。

戦時中、9歳の頃に「事故」で気絶した男性。数日間失神していたが、目を覚ますと頭が悪くなっていた。抽象的なものをほとんど考えることができなくなり、文字も読めない。かろうじて数字を解することはできるが、計算はできない。不思議なことに、猫と会話をする能力が宿った。
木工所で働いていたが、社長が死に職を失う。弟に引き取られ、都のわずかな給付金で生活をしている。猫の言葉を解することから、猫探しのアルバイトのようなこともしている。

捜索中のネコを探している最中、犬に連れられてある屋敷へ。そこの亭主は自分を「」と名乗り、ネコ殺しのプロという。ネコの腹をメスで切り、取り出した心臓を旨そうに食い、鋸で首を切断して飾っている。老人はメスを握って「ジョニー・ウォーカー」を突き刺す。殺した。そしてヒッチハイクで四国へ向かう。

僕は父親が殺害されたことを新聞で知る。「ジョニー・ウォーカー」は僕の父親だった。
図書館司書の男性は実は女性で、施設責任者の40代の女性は心の傷を負った元歌手。20年以上も前に一つの音楽を発表する。タイトルは『海辺のカフカ』。恋する男性を唄った作品は、とても形而上的なものだ。そしてその男性は20年前に死んでしまったのだった。

今作品はいわゆる村上春樹の文章の中では、かなり比喩の少ない作品と思いました。素直で伸びのある文章はさすがだと思います。ほんとうに透明感のある文章です。

形而上的、もしくはニューエイジ思想のようなものも作品全般に渡って散見できます。作品の雰囲気にマッチしているので、違和感はありません。
上巻では老人と僕のつながりがまだ提示されていません。下巻に興味が続いてきます。

4.3(金)読了
第五回新潮ミステリー倶楽部受賞作。
架空の島で繰り広げられるミステリ。会社を辞めて暇つぶしにコンビニ強盗をはたらき、警察に護送される途中に逃亡した伊藤。気が付くと見知らぬ島に来ていた。
不思議な島だった。150年近く外界との交流を断っている萩島は、轟という男だけが日本本島と交流を持っている。
喋る案山子は未来を予知することができる。桜という青年は人殺しをする免罪符を持っている。島には一つの言い伝えがある。それは、この島には欠けているものがあり、いつか外界からやってくる人間がそれをもたらしてくれるだろう、というものであった。萩島に欠けているものとはなんだ? 案山子が喋る未来とは?

春樹チルドレンの伊坂氏が書いたミステリですが、なかなか雰囲気のある作品に仕上がっています。荒唐無稽な話だけど幼稚っぽいという訳ではなく、ありえないことがさも当然という形で存在している萩島。そういう前提で書かれているため、違和感を感じることなく読み進められます。
SF的な感覚で楽しむこともできるでしょう。

ラストもうまい具合に纏め上げられているので、読後感もまずまず良い感じです。
難をいえばちょっと長いかな。途中、中だれしてしまった部分もあります。冗長というかなんというか、一つの物事を2、3度繰り返して説明する手法は、良くも悪くも村上春樹ですね。
4.2(木)読了
7編からなる短編集ホームレスや性的倒錯者など、いずれもアウトロー的な人々を扱っている。
以前読んだ石田氏の2作品が面白くなかったので、近作もまったく期待せずに読み始めました。意外といっては失礼だけど、まずまず面白かった。
文章の稚拙さや人物描写などは相変わらずだが、題材やストーリーはなかなか興味深い。いかにもチャチっぽいヤクザ者や警察を登場させなければ、まずまず読める。

ふと思ったけれども、若年層に支持を得ている山田悠介氏も石田衣良氏も、文章が読みやすいという点では共通している(山田氏の場合は単にド下手ともいえるが)。読みやすさというのはとても重要だと思う。漢字がいっぱい使われていたら、それだけで読む気がしなくなるし、幼稚な内容で難しい文章を使用していたら腹が立つことさえある。

村上春樹のような雰囲気で読ませるようなタイプでない限り、簡素は文章の鉄則なのかもしれない、と思った。
3.31(火)読了
8編からなる小説。表題の鉄道員(ぽっぽや)は直木賞受賞作。

正直なところ、鉄道員は感動させるために計算して書いたというのが鼻につき、ひねくれ者の私としてはあまり好きではない。
その代わりと言ってはなんだが、他の作品はなかなかの良作が揃っている。浅田氏の現代物の中では、かなり上位にランクインする短編ばかりだと思う。

「うらぼんえ」は良作。親族の多い夫に嫁いだ親族のいない女性。夫側の祖父の新盆で、子供ができないことをなじられ、親族から離婚を迫られる。そこへ現れたのが、死んだはずの祖父。祖父は孫である妻の味方となり、親族一同にぴしゃりと言う。ええ話やった……。

平成の泣かせやの異名は伊達ではない、と思わせる本です。読んでも損はありません。


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