読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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2.18(月)読了
学問の天分豊かなハンス・ギーベンラートは、周囲の期待に応えるため勉学に打ち込み、難関の新学校の入学試験(州試験)に2番目の成績で合格する。寄宿舎での生活でもハンスは努力を重ね、常にトップの成績を維持する。同室の天才肌で詩人のヘルマン・ハイルナーと出会う。ハイルナーとハンスはキスをする。仲良くなった2人は行動を同じくする。ハイルナーは詰め込み式の学校教育をばかにし、教師に対して反抗的に振る舞う。ハイルナーは学校側から要注意人物として扱われ、一晩無断外泊したことを契機に放校される。ハイルナーと仲が良かったハンスも疎んじられるようになり、勉学にも身が入らずに成績は低下する。授業についていけなくなり、精神的にも不安定となったところで、実質的に退学処分となり、入学からわずか半年で実家に帰る。 家で無為な時間を過ごしていたハンスは、幼い頃からの憧れの女性エンマと再会し、キスをする。しかし、エンマは汽車で実家に帰ってしまう。エンマはハンスのことを気まぐれで付き合ったのだった。機械工として働くことに決め、ハンスはなれない力仕事をこなす。職工はそれぞれ誇りを持って仕事をしていることに気づく。ある日、仕事仲間と酒場に繰り出し、正体不明になるまで酒を飲む。りんごの木の下で横たわったハンスは詩を口ずさむ。翌日、川の底で冷たくなっているハンスが発見される。 ヘッセの代表的自伝小説である「車輪の下」のあらすじです。ハンス少年の生涯が詩的な文章で書かれています。ヘッセも神学校に入学し半年で退学になって後、母親の愛情で立ち直り、職工となっています。今作の主人公のハンス少年は母親はいないという設定で、それゆえか寂しく死んでいくことになります。母親存在とハンス・ヘッセの将来の違いは意図的なものなのでしょうか。ヘッセは神学校退学後に2度、拳銃自殺を試みます。いずれも未遂に終わりましたが、母親の存在に負うところが大きかったのかもしれません。 車輪の下というのは、「頑張りすぎて、疲れきって、車輪の下じきになってしまわないように」というほどの意味のようです。ハンスは車輪の下じきになってしまいました。周囲の期待に潰されてしまった。繊細な性格だったのでしょう。読んでいてとても可哀想に感じます。 小説の舞台のドイツは太陽の日差しが弱く、曇っているのが常の国です。そのせいか国民性は物思いにふけり、やや陰鬱になりがちのようです。逆にイタリアは地中海の太陽をいっぱいに浴びて陽気な性格ができあがります。どちらがいいとうことではありませんが、私はドイツの国民性が好きです。 この小説を初めて読んだのは中学校1年生の夏でした。読書感想文のために読んだのですが、私の気質の合ったのか、その後も折にふれ読み返すことになります。そのたびにハンスに同情してしまいます。切なくて儚い最期でした。 PR
2.16(土)読了
全8篇のSF短編集。すべてが「おどろき箱を開けると、」という文章で始まり、箱の中からさまざまなものが出てきて物語が進行していきます。童話的な内容をイメージしているのか、海賊や地蔵、マッチ売りの少女なども登場し、ほのぼのとした雰囲気が作品を包みこんでいます。しっかりとオチもついており、なるほど!という作品もいくつか見受けられます。 「首神さま」「逆転」などは、使いふるされた手法ながら、なかなかいい味をだしています。最後までオチに気づきませんでした。 阿刀田氏はショートショートや短編で秀逸した作品を発表されており、「ナポレオン狂」で直木賞をはじめ、多数の賞を受賞されています。また、ショートショートの神様と言われている、故星新一氏の跡をついで「ショートショート・コンテスト」の選者もつとめておられます。
2.16(土)読了
当時、高校3年生の綿矢りささんが書いた小説。綿矢さんはこの本で文藝賞を受賞し、三島由紀夫賞候補にもなりました。17歳での文藝賞受賞は堀田あけみさん以来、20年ぶりの快挙だそうです。 突然、高校を不登校になり、部屋の物をかたっぱしから捨てる主人公朝子。ごみ捨て場で12歳の小学生、青木かずよしと出会う。かずよしは朝子の捨てた壊れたパソコンをもらい、家に持って帰る。翌日、新しくマンションに引っ越してきた婦人に、朝子は大量のパンツをもらう。下着の試着品だが、ケバケバしくて着られないので朝子にもらってほしいとのこと。朝子の母親はあきれるが、お礼として1万円分の図書券を朝子に渡しに行かせる。その家にいたのは小学生のかずよし。下着おばさんはまさひこの断母だだった。かずよしはパソコンを直し(もともと壊れていなかったのだが)インストールする。かずよしは朝子に、どうせ引きこもっているのならここでチャット嬢のアルバイトをしないかと誘い、朝子は承諾する。朝子は毎日、合鍵でかずよしの家に入り、おしいれの中でチャット嬢をする。 そんな生活を1ヶ月続ける。ある日、昼ごはんを食べに家に帰ると、仕事にでているはずの母親が朝子の部屋で寝ている。頭痛で休んだそうだ。母親は昨日、学校からの電話で朝子が不登校状態なのを知る。部屋が空っぽのことよりも、朝子が自分の将来のことを想って母親は泣く。驚いた朝子はひろゆきの家に行くが、鍵を開けている途中にかずよしの断母と遭遇。断母は1ヶ月前から朝子が来ていることを知っていた。かずよしの部屋に行くと、チャット嬢のアルバイト代30万円が手に入ったという。これを期にチャット嬢は終了。朝子は学校に戻ることを決意する。 正直、前半は退屈でおもしろくない本でした。中盤のパソコンでチャット嬢をするころからおもしろくなり、終盤は割と楽しく読むことができました。ただ、これで文藝賞受賞は甘いのでは?とは思いました。文章も幼稚なところもあります。堀田あけみさんもそうですが、10代ということで将来性を買っての受賞でしょう。確かに17歳でこれを書くのはすごいです。「インストール」「チャットレディ」というのも時代のツボにはまっています。 あと、綿矢さんはとてもかわいい。これは宣伝効果も絶大、と勘ぐってしまうのは悪い癖。 かわいそうなことに、綿矢さんは受賞パーティーなどのメディアに露出後、ストーカー被害などに遭ったそうです。それ以後はほとんどメディアに出演されなくなったそうです。
2.15(金)読了
らも氏のエッセイ集。一作が2~3ページと短いため、ちょっと時間が空いたときに読めます。あちこちに収録していたエッセイを集めて一冊の本にしたため、重複する内容もありますが、同じネタでも切り口を変えて書かれており、らも節もあいまって楽しく読めます。 <こんな場面で読むといい!> ①テレビのCM中・・・1~2作読めます。 ②電車の中・・・1駅間で2作読めます。 ③お湯が沸くまでの間・・・3作読めます。 ④寝る直前・・・おもしろくて眠れません。 以上、すべて実体験です。ちょびちょび読むには最適です。こういう本はどこででもひょいっと取り出して読めるので、バッグの中に1冊入れておくことをお勧めします。空いた時間には強力な味方となります。重宝な本なので、「これをメインに読書はしないぞ!ちょびちょび読むぞ!」と思っていましたが、不覚にも後半半分を湯船につかりながら一気読みしてしまいました。らも氏おそるべし。
2.15(金)読了
幼い頃から大庭葉三は、人間の営みというものがわからなかった。なぜ一日に三度のごはんを食べるのだろうという疑問からはじまり、人は何を考えて生きているのだろうと神経症的に考え、世の中がまったくわからず、不安と恐怖に襲われていた。他人とほとんど会話もできなかった葉三は、道化となることで自分を取り繕った。絶えず笑顔をつくって笑わせていれば、人とつながることができる。世間の恐怖から逃れることができる。そうして葉三は本当のことを言わない子になっていった。 中学校、高等学校に進学する。頭はよかったので、大して勉強もしなかったが有名高校に入学できた。団体行動が大の苦手で、医者に肺病と診断してもらい、親戚の家や父親の別荘から通学する。高校在学中にカフェの女給ツネ子と入水自殺を図る。葉三は生き残り、自殺幇助罪でつかまり、放校される。 絵描きになりたく、アトリエに通ううちに5つ年上の堀木と出会い、酒、女、共産党の地下運動などに手を染める。道化のサービス精神や母性本能をくすぐるなにかがあったのだろう、葉三はバーのマダムや女性編集者シヅ子の家に転がり込む。シズ子からは漫画の仕事をもらい、子供向け漫画を描いて酒代を作ったりもする。酒癖の悪さやだらしなさに自分自身あきれ果て、自分がいてはシヅ子に申し訳ないと思い、シズ子と別れ、バーのマダムの家に戻って生活する。 煙草屋の娘ヨシの素直さに惚れ、「一本勝負」で結婚。ある日、ヨシと男性編集者との濡れ場を見てショックを受ける。ヨシは疑うことをまったく知らない人間ゆえの出来事であったが、これを境に2人の関係は悪くなる。吐血の症状がでてきたため、葉三は薬屋に行く。そこの女店主は夫を結核で亡くしていたので、葉三に親近感を覚え、さまざまな薬を出す。酒をやめるように勧め、どうしても我慢ができなくなったらこれを使えと、注射器とモルヒネを渡す。そうして葉三は、アルコール中毒からモルヒネ中毒へと変転する。支離滅裂状態となった葉三は脳病院に入れられる。 「人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間でなくなりました。」 退院後は兄の用意した茅屋で60過ぎの女中と暮らす。 太宰自身の自伝でもあり、遺書ともいえる作品。 「恥の多い生涯を送って来ました」で始まり「もはや、自分は、完全に人間ではなくなりました」で幕を閉じます。おもったほど暗い内容ではなく、小むずかしい言葉も使っていません。エッセイを読んでいる感じといえばいいか、とても興味深く読むことができました。昭和初期の作品の中ではかなり高ポイントです。 文章の特徴として「、」が非常に多くもちいられており、一文が長い。「、」で区切って9行書くなどという芸当はアン・シャーリーも顔負け。 葉三の人生に対する不信と恐怖にも共感を覚えました。幼い頃の自分とオーバーラップします。 この後、太宰は玉川上水で入水自殺を遂げます。3度目の自殺未遂後、4度目でやっと思いを遂げました。高校の時、図書館の司書の女性は、「自分のことを本当に人間失格と思っているような人にあのような作品は書けない」と仰っていましたが、私は太宰に関しては、自分のことを本当に不完全な失格者と感じていたのではないかと思います。作品には諦念と懺悔の香が漂っています。 病跡学の本で作家の例が書かれていましたが、太宰もなにがしかの不全感のようなものを抱えていたのでしょうか。この時代の芸術家は自殺する人が多いような気がします。 2.14(木)読了 2.13(水)読了
2.12(火)読了
アルプスの小村で生まれた高地育ちの百姓の息子、ペーター・カーメンチント。進学を期に故郷を離れ、大学卒業後は文筆家として身をたてる。芸術家のサロンに出入りしたり、敬愛する聖フランシスのアシジの丘を訪れたりもするが、なかなか自分の居場所をみつけられず、都会の生活に失望し幻滅を感じるようになる。美しい少女エリーザベトへの愛と、姿は醜いが美しい魂をもった身体障害者ボビーへの奉仕により、彼はアイデンティティを保ち救われる。エリーザベトとの愛に破れ、ボビーも死んだ後、父親の介護をするために故郷へ帰る。ペーターは自然に包まれた土地と気取らない人たちのいる故郷に安住の地を見いだす。 ヘッセの処女作である今作品は、情景描写に多くのページが割かれていて、とても詩的な内容になってます。特に山や雲などの自然の描写は巧みで、そこだけを取り出すと一冊の詩集といった趣があります。作中人物がペーター(主人公)を詩人と讃えていますが、この作品全体が大いなる抒情詩といえます。詩のなかに人間愛や成長の物語が挿入され、故郷という安住の地に帰還することにより終息にいたります。 過剰な情景描写でやや中だるみになる部分もありますが、文章のうつくしさは文句なしです。考えて読むというよりも、詩を朗読するように心で感じとるのがいいと思います。 2.11(月)読了 2.10(日)読了 |
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