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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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2.15(金)読了
幼い頃から大庭葉三は、人間の営みというものがわからなかった。なぜ一日に三度のごはんを食べるのだろうという疑問からはじまり、人は何を考えて生きているのだろうと神経症的に考え、世の中がまったくわからず、不安と恐怖に襲われていた。他人とほとんど会話もできなかった葉三は、道化となることで自分を取り繕った。絶えず笑顔をつくって笑わせていれば、人とつながることができる。世間の恐怖から逃れることができる。そうして葉三は本当のことを言わない子になっていった。
中学校、高等学校に進学する。頭はよかったので、大して勉強もしなかったが有名高校に入学できた。団体行動が大の苦手で、医者に肺病と診断してもらい、親戚の家や父親の別荘から通学する。高校在学中にカフェの女給ツネ子と入水自殺を図る。葉三は生き残り、自殺幇助罪でつかまり、放校される。
絵描きになりたく、アトリエに通ううちに5つ年上の堀木と出会い、酒、女、共産党の地下運動などに手を染める。道化のサービス精神や母性本能をくすぐるなにかがあったのだろう、葉三はバーのマダムや女性編集者シヅ子の家に転がり込む。シズ子からは漫画の仕事をもらい、子供向け漫画を描いて酒代を作ったりもする。酒癖の悪さやだらしなさに自分自身あきれ果て、自分がいてはシヅ子に申し訳ないと思い、シズ子と別れ、バーのマダムの家に戻って生活する。
煙草屋の娘ヨシの素直さに惚れ、「一本勝負」で結婚。ある日、ヨシと男性編集者との濡れ場を見てショックを受ける。ヨシは疑うことをまったく知らない人間ゆえの出来事であったが、これを境に2人の関係は悪くなる。吐血の症状がでてきたため、葉三は薬屋に行く。そこの女店主は夫を結核で亡くしていたので、葉三に親近感を覚え、さまざまな薬を出す。酒をやめるように勧め、どうしても我慢ができなくなったらこれを使えと、注射器とモルヒネを渡す。そうして葉三は、アルコール中毒からモルヒネ中毒へと変転する。支離滅裂状態となった葉三は脳病院に入れられる。
「人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間でなくなりました。」
退院後は兄の用意した茅屋で60過ぎの女中と暮らす。

太宰自身の自伝でもあり、遺書ともいえる作品。
「恥の多い生涯を送って来ました」で始まり「もはや、自分は、完全に人間ではなくなりました」で幕を閉じます。おもったほど暗い内容ではなく、小むずかしい言葉も使っていません。エッセイを読んでいる感じといえばいいか、とても興味深く読むことができました。昭和初期の作品の中ではかなり高ポイントです。
文章の特徴として「、」が非常に多くもちいられており、一文が長い。「、」で区切って9行書くなどという芸当はアン・シャーリーも顔負け。

葉三の人生に対する不信と恐怖にも共感を覚えました。幼い頃の自分とオーバーラップします。
この後、太宰は玉川上水で入水自殺を遂げます。3度目の自殺未遂後、4度目でやっと思いを遂げました。高校の時、図書館の司書の女性は、「自分のことを本当に人間失格と思っているような人にあのような作品は書けない」と仰っていましたが、私は太宰に関しては、自分のことを本当に不完全な失格者と感じていたのではないかと思います。作品には諦念と懺悔の香が漂っています。
病跡学の本で作家の例が書かれていましたが、太宰もなにがしかの不全感のようなものを抱えていたのでしょうか。この時代の芸術家は自殺する人が多いような気がします。
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