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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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2.13(水)読了
フランスのプロヴァンス地方で、ある青年が人里はなれた高地を旅している。荒れ果てた土地を3日間歩きまわったが、人とは出会えず、水も尽きてしまう。困りはてたところで、一人の羊飼いと出会う。青年は羊飼いのもとに泊めてもらう。羊飼いはエルゼアール・ブフィエという名で年齢は55歳、とても寡黙だ。翌日、羊飼いは食卓にドングリを置き、ひとつずつ丁寧に調べ、よい実とわるい身を分けていく。青年は手伝おうとしたが、これは自分の仕事だからと羊飼いは断る。羊飼いは100個のよいドングリを持って山へ行き、鉄の棒で穴をあけ、ドングリをひとつ入れて穴を塞ぐ。同じように100個のドングリをすべて穴のなかに入れて、丁寧に穴を塞いでいった。このようにして羊飼いは、3年間に10万個の実を植える。そのうち2万本の芽がでて、1万本が樫(かし)となり育っている。
羊飼いは一人息子を失い、妻に先立たれ、人里はなれた山奥にひっこんで羊や犬と暮らすようになった。そして、この地方が樹木がないため死にかかっていることに気づき、荒野をなんとかしようと決意し、木を植え始めたのだ。
第一次世界大戦での5年間の兵役の後に、青年は再び羊飼いのもとを訪れる。羊飼いは生きており、ひたすら木を植えつづけていた。最初に植えた木は樹齢10歳を超え、立派に生長していた。樫のほかにブナや樺の木も植えられており、すっかり辺りは一つの森になっていた。
行政官庁がこの''自然林''を視察しに大規模代表団を送ってきた。彼らはどうでもいいことをしゃべったあげく、森を国の管理下におき、炭焼き目的の立ち入りを禁止する措置をとる。羊飼いはただひたすら木を植えつづける。あたりは6、7メートルの木で埋め尽くされるようになった。
第二次世界大戦で木炭ガスの燃料として森の木の伐採がはじまったが、道路網からはずれた場所で採算が合わないことが明らかとなり、中止された。羊飼いはなにも知らず、あいかわらず穏やかに自らに課した仕事をつづけていた。そうして87歳で羊飼いは死んでいった。
荒れ果てた高地は羊飼いにより豊かな森林となり、村ができ、28人が住んでいる。そのうち4軒は若い家庭だ。森が保持する雨や雪を受けて、古い水源がふたたび流れはじめ、人々はそこから水を引いている。村祭りも再開され、人々も集まり、1万人を超える人々がいまの幸せをひとりの羊飼いに負っている。

ひとりの羊飼いが木を植え続け森になり、人々が集まり村ができる。
とても感動的な話ですが、この話自体はフィクションです。アメリカの編集者から「実在した忘れえぬ人物」を書いてほしいと頼まれて渡したのが今作ですが、羊飼い(エアゼアール・ブフィエ)は存在しないことがわかり、原稿は返却されます。そこでジオノ氏は版権を放棄し、原稿をあちこちに寄稿したので、この物語は13カ国語に訳されて紹介されるまでになりました。
何十年もただひたすら木を植え続ける。継続は力といいますが、なかなかできないことです。それを成し遂げたことにより人が集まり、幸せが生まれました。この物語は人生の縮図なのかもしれません。

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