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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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2.3(日)読了
幼い頃に両親、祖父母、ただひとりの姉を亡くした20歳の主人公が「孤児意識の憂鬱」から逃れるために伊豆へひとり旅に出かけ、途中旅芸人の一団と出会い、一行中の14歳の踊子に心を惹かれていく。主人公は踊子への想いをつのらせ、歪んだ孤児意識から開放されていく。

「伊豆の踊子」は筆者本人の実体験を小説にしたものです。川端康成は2歳で父を、3歳で母、7歳で祖母、10歳で姉、15歳で祖父を亡くしています。その影響がこの作品にもでており、主人公の実存在の不安定感と自我同一性の未確立があらわれています。主人公は14歳の踊子に淡い恋心を抱きますが、これは単純に母親の影を追い求めたと考えていいのだろうか?私が感じたところは、20歳の青年がひとりの女性という「確かなもの」との接触を果たすことにより、自分が自分である、そして一個の男性であるということを強烈に認識するに至り、自我の安定を図る。いわば踊子は自我を固定させるための「装置」もしくは青春期の「通過儀礼」、あるいは幼き頃に亡くした母親の影を振り払う「女性性」の象徴として現れたのではないだろうか。

本書には他にも3編掲載されている。

・温泉宿・・・晩夏から冬にかけての、宿の女中と酌婦たちの流転を描いたもの。作中
        女性の人生の変遷が客観的に描かれている

・叙情歌・・・植物の運命と人間の運命を相似的にとりあげ、花粉を運ぶ胡蝶に結婚さ
                 せてもらいたいと願う女性のひとり語り

・禽獣・・・・・主人公の飼育する禽獣類と昔の女性とを対比させた作品。

このなかでは「禽獣」が一番好き。生き物の命をシニカルに描いており、作品を通していい意味での厭世観が漂っている。暗くなりがちなテーマを客観的に描くことにより、淡々と物語を進行させています。「ノルウェイの森」の雰囲気に近いものがある。

川端康成が少年時代を過ごしたのは、現在私が住んでいる場所から程近い所ということもあり、割と親近感があります。彼の生きていた時代は田んぼだらけのとんでもない田舎だったようです。現在は電車やモノレールも整備され、自然も残っており、住み心地の良い地域になっています。
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