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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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1.24(木)読了
東北と関西の拘置所で看守長として勤め、死刑執行にも立ち会った経験を持つ戸谷氏の本。各地の拘置所での死刑囚の待遇や心境の変化など、当事者でしか知り得ない情報が記されています。

死刑囚への死刑執行の申し渡しをいつ行うかは、拘置所によって異なるようです。たとえば関西のO拘置所は死刑執行の2日前に申し渡しますが、東北のS拘置所は執行当日の午前中に言い渡すそうです。どちらがいいのかは分かりませんが、私が死刑囚だったら、執行の2日前に申し渡してほしいと思います。実際、S拘置所において、朝食後~11時までは「魔の時間」と言われ恐れられているそうです。午前11時までに死刑囚の独房に「お偉いさん」がやってきて、刑務所長室へ連行され、死刑が言渡される。その後、時間をおかずに執行されます。これは考えただけで恐ろしい。毎日が死と隣りあわせで、生きた心地がしないと思います。もっとも、2日前に言渡されると、即日執行ではない分、書き物や心の整理などをする時間はありますが、死の恐怖から精神的に厳しいかもしれません。どちらにも一長一短があります。
現在はどちらの刑務所も即日言渡しがされているようです。

本書において筆者は、基本的には死刑制度廃止を訴えています。憲法36条の「公務員の残虐な刑罰の執行を禁止」を根拠とし、執行職員のつらさ、公務員でありながら殺人(幇助)を行わなければならないことによるプライドの低下、死刑囚に処刑の恐怖を味わわせたうえに、最後には処刑するという残酷性などを指摘しています。

一見、戸谷氏の論は正しそうにみえる。確かに憲法36条で公務員の残虐刑は禁止されているし、死刑囚に刑の執行以外の苦痛を与えているのもその通りだ。しかし、戸谷氏は遺族感情をどうすべきかについて、一切触れられていない。元看守長という経歴からすると、死刑囚側に立って考えるようになるのは当然かもしれないが、単に死刑反対を唱えるだけでは国民は納得できないだろう。

戸谷氏は死刑の代替刑として、100歳満期の懲刑(仮釈放、恩赦なし)という私案も披露されている。人間の寿命を100歳と考えて、25歳なら懲役75年、40歳なら懲役60年として、100歳になれば満期で出所させるというものらしい。一瞬、目を疑った。本気で言っているのだろうか?だとしたら、失礼ではあるが、戸谷氏の頭を疑ってしまう。誰が100歳で出所したいだろうか?100歳で出所した後はどうするのだろうか?ほとんどの友人、親類縁者は亡くなっている。お金はない、仕事はない、必然的に死ぬしかない。代替刑としては終身刑(仮釈放、恩赦なし)が妥当ではないか。

死刑制度の可否については昔からさまざまな議論があるが、現在のマスコミ・世論は死刑存続がやや強いように思う。10数年前までは死刑撤廃論が優勢だったが、未成年者による残虐殺人の頻発等をきっかけに、死刑存置に傾いてきたように感じる。
世界の流れから考えると、日本も20~30年以内には死刑撤廃がなされると思うが、その場合には、遺族感情、遺族補償、代替刑の確立を中心に徹底的に議論して、新たな法整備をする必要がある。場合によっては国民投票が必要かもしれない。
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