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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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3.17(月)読了
<あらすじ>
小さい頃からおとなしく、感情の起伏が驚くほど少ない女の子。母親は心配して病院に連れていくが、知能には問題がない、この子の個性といわれる。成長してもなにに対しても興味がもてず、感情も涌かず、ひとりでぼんやりしているのが好きだった。ぼんやりと何時間でも過ごしていると、何時間でも飽きることがなかった。日々のせわしない生活があまりにも自分にあっておらず、親に心配をかけないように精一杯ついていこうとする。学校にも勉強にも、歩くスピードさえがんばって遅れないようにする。家に帰ってくると食事もせずに、ただただ寝て過ごした。この時間が彼女にとって唯一最大の幸福の瞬間だった。そんな彼女は痩せていて、まわりからはミイラ女と呼ばれるようになる。感受性が強く、まわりの感情を悪い磁場として捉えてしまい、ついに学校へいくことができなくなる。ひとりで家にいると落ち着く。ぼんやりと時間を過ごしていれば十分、幸せを感じた。
父は「いずれはひとりで生きなければならない。何がしたいかよく考えなさい」と言われるけれども、人はなにかしたいものがないといけないのだろうか? ただ生きているだけではいけないのだろうか? と考える。彼女は精一杯の努力をして、それでもこうなったのだった。ヒトはお金がないと生きていけない、つまり死だ。お金を稼げないと弱者だ。なんだ、生まれてきた目的はお金だったのか。だったら、生きていなくてもいいや。でも死にたくはない。このままの状態でいたいが、それは難しいことらしい。母は父と違い、このままの状態でいいと言ってくれる。うれしくて母に抱きつくと、母ははらはらと涙を流した。
そして日が昇り、風が吹き、日が沈むと30年の月日がたっていた。気がつくと、年老いた母が彼女の膝元で死んでいた。ミイラのようになっていた。彼女は何も食べていないので痩せこけていた。彼女は母親を上から抱きしめる。腐った臭いがした、それはなつかしいような臭いだだった。そして彼女にもお迎えがきた。彼女は天に上昇し、光の渦に入っていく。そして彼女は自分が誰だったのかをようやく思い出した。彼女は木霊だったのだ。樹齢2000年の杉の木だったのだ。かつて杉の木だったが彼女は、人間の伐採により切られ、その後は転生できる木がなくなってしまった。森が消えてしまったのだ。しかたなく人間に生まれ変わったが、木霊にヒトを生きることはできなかった。そして彼女は願う、今度こそ木に転生させてくださいと。その願いは叶えられ、一粒の種として生まれ変わる。種は成長して木となる。自然系のなかで貴重な循環を担うこととなる。彼女はただ、世界のバランスのために生きている。彼女は存在しているだけでよかった。そう、命はただ、存在していることだけで、ギフトなのです。

「転生」と主題は似ていますが、こちらの方がよりダイレクトに伝わってきます。
なぜ生きなければならないか、なんのために生きるのか、そして他人と同じ価値観で生きなければならないか、そのようなことに木霊の霊は悩みます。ヒトはそれぞれ生まれてきた理由も違えば、課題も異なります。ゆえに、同じような生き方をする必要はない、そのヒトの課題をクリアする、もしくはそのヒトにあった生き方をすればいいということでしょうか。

この作品でも人間の環境汚染、森の伐採により地球が泣いている姿が描かれています。
田口さんの作品には転生、環境汚染、他人とは違っている自分、などが描かれていて、著者の訴えたいことが明確です。非常に好感をもて、心に響いてきます。
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