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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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11.21(金)読了
第1回このミステリーがすごい!大賞・大賞金賞受賞作。
海外で薬指を撃たれて失意に沈むピアニストと、脳障害を抱える少女の物語。
少女は天才的な音楽の才能があり、1回聴いた曲は間違えることなく演奏することができた。その才能を発見した主人公のピアニストは、次々に曲を教える。
各地を訪問してボランティア的に演奏をする。ある日、脳関係の研究病院で演奏をすることになり、少女と2人で訪れる。
そこのスタッフの一人に、ピアニストの高校時代の同級生の女性がいた。その女性スタッフと少女が病院の庭で視察用ヘリコプターが飛来するのを見ていると、あろうことかヘリは2人の元に墜落した。
スタッフは少女をかばって重体となる。少女は軽症ですんだが、どうも様子がおかしい。ピアニストが訝っていると、脳障害を負った少女が突然流暢に話し始めた。訊くと、どうやら少女と職員の心が入れ替わってしまったようだ。

……というお話。はっきりいって使い古された内容で、目を引くところはありません。ミステリの賞ですが、ミステリらしいところは皆無といっていいでしょう。
率直に言うと、面白くありませんでした。500ページの長編ですが、途中になって、読み始めたことを後悔しました。せっかくだからなんとか全部読みましたけど、最後まであまり面白くありませんでした。

文章自体はとてもきれいです。ピアノを弾いているシーンや風景描写などは、あたかも抒情詩のようです。ヘッセの文章を思い浮かべました。
内容もぜんぜん悪くありません。が、面白くなかった。選者は涙腺が壊れたそうだが。うーむ。

よく考えてみる。どこが悪いのか。
まず、どうでもいい(といったら失礼だが)描写が多すぎる。風呂に入ったり食事をしたりするシーンを描く必要はないと思う。伏線として必要ならいいけれど、そうでないなら読むのが苦痛になる。
文章がだらだらっと書かれているので、場面展開をきっちりしてメリハリをつけたらいいと思う。そうすれば100ページは削れて密度も増す。

そんなところかな。あとはベタ過ぎる展開なので、もうちょっと捻りがあればよかったかな。事件が起こった途端に最後までの展開が読めたもん。その通りになったし。

批判ばかりになりましたが、文章はとてもきれいです、とフォロー。
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11.19(木)読了
働く女性の短編6編。
主に適齢期を過ぎた30代女性を扱っており、仕事と結婚、子育てなどに揺れる女性心理をユーモアに描いています。

一昔前の日本では女性は寿退社が当たり前、という風潮があったそうですが、現在は当てはまりませんね。不況と雇用不安から女性も結婚後働くのが、半ば当然になってきています。
総合職の女性も増加の一途をたどっており、それらがあいまって、婚姻年齢の低下、結婚しない女性(男性もね)も増えています。

ライフスタイルの多様化ですね。ただやっぱり女性にとって結婚、出産というのは大事業であることは間違いありません。結婚は何歳でもできるけど、出産にはタイムリミットもあります。そして結婚しないと(一般的には)出産できません。

……そんな女性心理を鋭く? 描いており、まずまず面白い作品になっています。
なんとなく群洋子の「無印良品」シリーズを思い出しました。あれも面白かった。
11.18(火)読了
第15回ホラー小説大賞「大賞」受賞作。
遺体をバラして遺品作成業を家業としている庵堂家。長男は職人として解体、作成を、3男は叔父とともに葬儀業を営む。次男は東京で普通に不動産業の営業をやっている。

遺品は骨からスプーン、フォーク、風鈴、櫛、笄(こうがい)、箸など、皮膚からハンドバッグ、ポーチなどを作り出す。脂肪は石鹸などにする。

不動産営業で疲れた心身を休ませるためと、父親の7回忌のため、次男は千葉県茂原市の実家へ戻る。7回帰までは10日あるが、兄は仕事で忙しく、文字通り寝食を削って遺品作成をしている。次男は汚れ放題の家の掃除をする。

そんな時に、先代まで繋がりのあったヤクザ業の組長から依頼が舞い込む。不慮の事故死をした9歳の娘を剥製にしてほしいという。
7回忌までは仕事を断る予定としていた長男だが、相手は庵堂家と因縁の深い組織だった。とても断れず、無理を承知で依頼を受ける。長男は連日寝ずに仕事を続ける。

剥製が完成間近いのある日、組長夫婦が商売敵にそろって命をとられる。依頼は中止。だが長男は納得いかず、完成まで頑張る。完成。家族3人揃って盛大に火葬される。

さて、この3兄弟、実は誰一人血が繋がっていないということを長男から告げられる。ヤクザの依頼で見せしめに生きたまま解体されたヤクザ者の遺児を、先代が引き取ったのが長男と3男。実の息子は次男だけ。

最終的に、長男の提案で3兄弟は家業を解散。それぞれの方向へ進んで行くことになるが、どうも3人が3人とも遺品作成業に関わるという選択をするようだ、というオチ。

さて、本作をホラー小説とみなしていいのかどうかわかりません。というのは、あまり怖くないからです。
ホラーというよりもむしろ、サスペンスやヒューマンドラマといった方が適切かもしれません。
恐怖を期待して読んだ方は残念に思うかもしれませんね。

3人称で3兄弟に視点がポンポン飛ぶのが文章の特徴です。いきなり視点が移り変わるので戸惑う部分もありましたが、ストーリー設定はまずまず良いと思います。

ちなみに3男、汚言症という汚い言葉を使用してしまうという精神的な病気に罹っていて、「糞」という言葉を連発します。
「糞糞糞糞糞糞糞」などと叫ぶのですが、おそらくこれは「ジョジョの奇妙な冒険」のオマージュ(といっていいのかわからないが)ですね。ほぼ間違いありません。
11.17(月)読了
ジュニア向けファンタジー小説家、中村うさぎのエッセイ集。『だって、ほしいんだもん』の続編にあたります。

この人のエッセイの特徴として、ガバガバ金を使うこととシモネタ(ウンコの話が多い)があります。
ちょっと買い物に行って100万円。傘を買うつもりが、バッグに服にハンドバッグに150万円。
あげくのはては衝動的に3800万円のマンションが頭金100万円だから購入しようとしたり。頭金を父親に借りようと電話して一喝されて、あきらめたそうですが。

まあ、不動産はネタでしょう。たぶん。
ブランド品の類は、本人も言っているように、買い物依存症の気があるようです。収入が相応にあるから大丈夫なんでしょうけど(30万円オーバーの賃貸マンションに住んでるそうです)。
カードローンを払えなくなって自己破産する典型を見ているような気になります。

スニーカー文庫で連載していたエッセイのようで、文章もそれにあわせています。
「だまれっ!!!!!」(←こんな文章ね)
私的には、エッセイではギリギリ読めるけど、この文章で小説を書かれたらそれだけでアウトです。
だから、ライトノベルは受けつけない。生理的にダメ。
「!!!!!」「…………」(←腹たつ)
『涼宮ハルヒ』が読めるぎりぎりだね。

閑話休題。
さて、この人って、ファンタジー書いてるんでしょうか? 本屋でも見たことがありません。
『家族狂』という本を手にとったことがありますが、図書館で借りただけで読まずに返しました。あまり面白そうでなかったので(借りるな)。
次に見かけたときは、がんばって読んでみるかな。
11.15(土)読了
中学生の芳山和子は、理科準備室で不審な人影を発見する。しばらくするとその影はなくなったが、テーブルの上にはラベンダーの匂いのする薬品がある。それを嗅いだことをきっかけに、時空移動をするようになる。
未来から数日過去に戻った和子は、同級生の浅倉吾郎の家が火事になるのを防いだり、事故に遭うのを防いだりする。
もうひとりの同級生、深町一夫と3人で先生のところに相談にいく。和子は、こんな能力はなくなってほしかった。その結果、もう一度タイムリープをして、理科準備室の人影を確かめないとダメだという。
過去に戻った和子は、理科準備室で人影を待ち伏せして、顔を見る。なんとその人は、同級生の深町一夫だった! 
彼は600年以上先の未来人だった。彼は小学生ながらタイムリープの研究をしており、その結果、この世界に来てしまった。だが、帰るための分の薬品を持ってくるのを忘れてしまった。しかたなく、ここの中学生となって薬品を作り上げているのである。
方法は集団催眠術。みんなを催眠状態にして、わずか2ヶ月前にこの学校に来たにもかかわらず、2年以上前から知己という記憶をみんなに植え付けたのだ。
本来は未来のことは過去人に話してはいけないのだが、例外がある。帰る前にその人の記憶を失わせればいいのだ。ここで一夫は和子に告白する。好きだと。和子は記憶がなくなるのが悲しくてしようがない。だが、これは仕方のないことだった。
記憶は消失し、一夫という存在も消えた。みんなの記憶から消えてしまった。ラベンダーの香りが彼の住んでいた家の庭から漂っている。

と、いうのが「時をかける少女」のあらすじ。単純な時空SFものです。
なんと、これ、32年前に書かれたのですね。
筒井康隆というと、文章に癖がある印象があったのですが、この本はごく普通の文章で書かれています。ひらがなを多用しており、情景描写もとてもシンプルです。
内容的には、まあまあ。対象年齢は小学生~中学生くらい。

その他、「悪夢の真相」「果てしなき多元宇宙」の2編を収録。
電車の中でリラックスして読むのがいいかな。
11.13(木)読了
佐倉アスリート倶楽部代表、小出義雄のマラソン指導記録。
小出氏は、高橋尚子選手や千葉真子選手といった一流マラソン選手を指導した監督として有名です。
この本は4年前のアテネオリンピック直前に緊急出版されました。
高橋尚子選手の落選秘話や選考基準、プロ化など、内容は多岐にわたっています。

高橋尚子選手はシドニーで金メダルを受賞したあと、アテネ、先の北京と残念ながら出場することができませんでした。
そして先月、プロ選手としての引退を表明しました。おつかれさまでしたと言いたいです。

小出監督の書籍はいままでに数冊読んできましたが、高橋選手の練習量はハンパではありません。
練習期には毎日40キロ近く走ったり、3500メートルのボルダーで高地トレーニングを積んだり……。
そんなことを4年間ずっと続けて、代表選考を得てオリンピックに出場するのです。

私も毎日10キロ弱を4年近く走っていますが、それだけでも、「あー、今日は疲れてるからやめとこうかな……」などと思ってしまいます。
やはりプロ選手は並ではないなと思います。
11.11(火)読了
6篇のオムニバス形式の短編集。
今回は風俗ユーモア小説ふうになっています。早い話がエロ。

どの作品も面白く、ついつい引き込まれて一気読みしてしまいました。
誤植を1箇所発見。年齢設定が50代前半なのに41歳と記述されているエロ作家さん。そういうこともあるさ。

奥田氏の書き出しの特徴として、主人公の年齢性別職業などの個人情報を一番最初にバーンと出すというものがあります。これはどの作品においても、ほぼ不変です。
人物のプロフィールをいつの段階で記述するのかは結構悩むものですが、こういうふうに定型化すると楽かもしれません。
「城田宗彦は35歳の会社員。冴えない風貌で満員電車に乗りこんだ。」とか。

ちなみに題名の「ララピポ」というのは「a lot of people」 のことです。
たくさんの人、縺れ合って物語をつくっていく、いいですねぇ。ナイスな題名です。

さあて、奥田氏の作品もだいぶ読み終わりました。長編物はあと1、2作あるくらいかな。
この人の本、面白いので、全部読んだら次は誰の本を読もうと、ちょっと悩みます。
久しぶりに古典にも手をだそうかな、とも思いますが、戦前のモノってあまり面白いと感じたことがありません。特に邦本は。

誰かオススメの本を教えてくれないかなー、と思う今日この頃です。
11.11(火)読了
短編集。5編からなっています。
今回は会社で働くサラリーマンを題材としたユーモア小説です。もちろん伊良部一郎はいません。
5編すべてが営業課なのは、奥田氏が広告業で営業をしていたからでしょう。
サラリーマンの悲喜劇がユーモアを交えて上手く描かれています。

内容的にはなかなか面白いです。奥田氏の作品としては中の中といったところでしょう。
でもやっぱりユーモアものを書かせたら天下一品ですね。
『最悪』『邪魔』といった本格物も秀逸なので、最高級の両刀使いといったところでしょう。

ちょっと考えたのですが、奥田氏がホラー小説を書いたら面白いのではないかと。
『ウランバーナの森』では心理描写で少しホラーっぽいところがあったので、それをもっと怖くしたら面白いものができそう。ぜひ書いて欲しいところです。
11.8(土)読了
奥田英朗の第3作目。450ページ2段組の長編犯罪小説。
会社の商品の横流しを隠すために放火をおこなった会社員。それがもとで、
平凡な家庭がもろくも崩壊していく。
会社とヤクザと刑事の3者が織り成して物語が進行する。放火犯の会社員の妻はパート先で共産党関係の運動に参加。いいように使われて、周囲との軋轢を生む。夫とは離婚を決意し、子供たちを犯罪者の子にはしたくない一心で、夫のアリバイ作りのために放火。はずみで刑事を刺してしまう。

ストーリー展開は、前作『最悪』と同様に3者の3人称方式で進行していきます。
短い文章で淡々とセンテンスを重ねるのが、奥田流です。描写力もすばらしく、読んでいて気持ちいいです。

ストーリー関係でひとつ不満なのは、九野刑事の義母の存在です。
数年前の事故で彼女は死んだということになっているのですが、その理由も、現在の義母が誰であるのかも書かれていません。義母の不動産を不動産屋が問い合わせてきたという事実も、意味のないものになっています。
致命的欠陥というわけではありませんが、他がかなり良い出来であるだけに残念です。

全体的にみて、傑作の部類に入ると思います。社会派の作品を書いたらピカ1ですね。おすすめ。
11.5(水)読了
元長野県知事、田中康夫のデビュー作。文藝賞受賞作。
1980年代に生きる、物質金銭的に満ち足りて、「なんとなく」生きている大学生を描いています。
引っかかりがなく、つかみ所のない文体で、「なんとなく」という気だるい雰囲気がよく伝わってきます。

この本は、雰囲気を読むものであって、内容はあまり重要でないと思います。
私は詩を詠むように、流れるような文章の妙を楽しみました。
ちなみに内容は、男と女がそれぞれ生きている、それだけです。まったくおもしろくありません。

これを大学在学中に書いたというのですから、すごいと思います。
20歳にして自分の文体を身につけていたのですね。
こういう文章の本はあまり読んだことがないので、とても新鮮な気持ちになりました。


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