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読書日記を感想文的に書き綴っています。「お知らせ」には日々の雑感、興味のある分野を記載しています。
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4.8(水)読了
エディプスコンプレックをモチーフとした青春小説、下巻。
父親を殺して母親を奪う。主題として超古典的内容ではある。
題名にもあるようにフランツ=カフカの文章をイメージしたようだ。一人称の僕が行動する展開では、抒情詩のように流れる文章が続く。情景描写も同様。そして文章の語尾が(僕の視点では)ほぼすべて現在形、もしくは現在進行形というのも特徴。

文章自体は綺麗でさすがと思うのだが、風景描写や情景描写が多すぎて途中でうんざりしてしまった。そういう箇所は結構読み飛ばしてしまったし、読み飛ばしても内容理解にはあまりさしつかえない。もう少し短くしてほしかった。カフカを真似しすぎ。

ニューエイジ思想や哲学的な考え方、内容そのものも夢や比喩、死後の世界などを取り扱っていて、良くも悪くも非現実的なつくりになっている。悪くはないが、ちょっと解りにくい。理解できたようなできなかったような、読後の印象はそんな感じ。
まぁ、青春小説ですね。
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5.12(火)読了
手づくりワインの参考書。
ワインの酵母から温度管理、ぶどうの品質・銘柄など必要充分な内容が書かれています。

どぶろくを造ろうと思って(1%以下のです笑)図書館を探したのですが、残念ながらそれらの本はありませんでした。代わりにこの本を借りたというわけです。
ワイン作りも酒造りも似たところがあります。簡単にいえばワインは果汁(糖)と酵母を混ぜていればできます。酒は米のでん粉を分解して糖分にするために麹を投入して、あとは酵母を入れておけばいい。酵母が糖分を分解して、熱と二酸化炭素とアルコールができます。

ちなみに酵母は、家にあるイースト菌でもOKです。本格的にはワイン酵母や清酒酵母などがあるのですが、パン酵母でもそれなりにできるようです。さっそくまぜまぜ……。
100%ぶどうジュースにイースト菌を投入して砂糖100グラムを入れて混ぜたら、盛んにあわ立ってきました。1日半後が発酵のピーク。部屋中ワイン(糖?)臭くて眠れない。寝不足。
翌日見てみると、まだ泡がでている。無事に出来上がりそうです。たのしみ。

4.6(月)読了
15歳の誕生日の夜に家出をした「僕」。係累のまったくない土地、高松へ。私設図書館に通ううちに、そこの司書と仲良くなり、図書館の一室で寝泊りさせてもらうことになる。

戦時中、9歳の頃に「事故」で気絶した男性。数日間失神していたが、目を覚ますと頭が悪くなっていた。抽象的なものをほとんど考えることができなくなり、文字も読めない。かろうじて数字を解することはできるが、計算はできない。不思議なことに、猫と会話をする能力が宿った。
木工所で働いていたが、社長が死に職を失う。弟に引き取られ、都のわずかな給付金で生活をしている。猫の言葉を解することから、猫探しのアルバイトのようなこともしている。

捜索中のネコを探している最中、犬に連れられてある屋敷へ。そこの亭主は自分を「」と名乗り、ネコ殺しのプロという。ネコの腹をメスで切り、取り出した心臓を旨そうに食い、鋸で首を切断して飾っている。老人はメスを握って「ジョニー・ウォーカー」を突き刺す。殺した。そしてヒッチハイクで四国へ向かう。

僕は父親が殺害されたことを新聞で知る。「ジョニー・ウォーカー」は僕の父親だった。
図書館司書の男性は実は女性で、施設責任者の40代の女性は心の傷を負った元歌手。20年以上も前に一つの音楽を発表する。タイトルは『海辺のカフカ』。恋する男性を唄った作品は、とても形而上的なものだ。そしてその男性は20年前に死んでしまったのだった。

今作品はいわゆる村上春樹の文章の中では、かなり比喩の少ない作品と思いました。素直で伸びのある文章はさすがだと思います。ほんとうに透明感のある文章です。

形而上的、もしくはニューエイジ思想のようなものも作品全般に渡って散見できます。作品の雰囲気にマッチしているので、違和感はありません。
上巻では老人と僕のつながりがまだ提示されていません。下巻に興味が続いてきます。

4.3(金)読了
第五回新潮ミステリー倶楽部受賞作。
架空の島で繰り広げられるミステリ。会社を辞めて暇つぶしにコンビニ強盗をはたらき、警察に護送される途中に逃亡した伊藤。気が付くと見知らぬ島に来ていた。
不思議な島だった。150年近く外界との交流を断っている萩島は、轟という男だけが日本本島と交流を持っている。
喋る案山子は未来を予知することができる。桜という青年は人殺しをする免罪符を持っている。島には一つの言い伝えがある。それは、この島には欠けているものがあり、いつか外界からやってくる人間がそれをもたらしてくれるだろう、というものであった。萩島に欠けているものとはなんだ? 案山子が喋る未来とは?

春樹チルドレンの伊坂氏が書いたミステリですが、なかなか雰囲気のある作品に仕上がっています。荒唐無稽な話だけど幼稚っぽいという訳ではなく、ありえないことがさも当然という形で存在している萩島。そういう前提で書かれているため、違和感を感じることなく読み進められます。
SF的な感覚で楽しむこともできるでしょう。

ラストもうまい具合に纏め上げられているので、読後感もまずまず良い感じです。
難をいえばちょっと長いかな。途中、中だれしてしまった部分もあります。冗長というかなんというか、一つの物事を2、3度繰り返して説明する手法は、良くも悪くも村上春樹ですね。
4.2(木)読了
7編からなる短編集ホームレスや性的倒錯者など、いずれもアウトロー的な人々を扱っている。
以前読んだ石田氏の2作品が面白くなかったので、近作もまったく期待せずに読み始めました。意外といっては失礼だけど、まずまず面白かった。
文章の稚拙さや人物描写などは相変わらずだが、題材やストーリーはなかなか興味深い。いかにもチャチっぽいヤクザ者や警察を登場させなければ、まずまず読める。

ふと思ったけれども、若年層に支持を得ている山田悠介氏も石田衣良氏も、文章が読みやすいという点では共通している(山田氏の場合は単にド下手ともいえるが)。読みやすさというのはとても重要だと思う。漢字がいっぱい使われていたら、それだけで読む気がしなくなるし、幼稚な内容で難しい文章を使用していたら腹が立つことさえある。

村上春樹のような雰囲気で読ませるようなタイプでない限り、簡素は文章の鉄則なのかもしれない、と思った。
3.31(火)読了
8編からなる小説。表題の鉄道員(ぽっぽや)は直木賞受賞作。

正直なところ、鉄道員は感動させるために計算して書いたというのが鼻につき、ひねくれ者の私としてはあまり好きではない。
その代わりと言ってはなんだが、他の作品はなかなかの良作が揃っている。浅田氏の現代物の中では、かなり上位にランクインする短編ばかりだと思う。

「うらぼんえ」は良作。親族の多い夫に嫁いだ親族のいない女性。夫側の祖父の新盆で、子供ができないことをなじられ、親族から離婚を迫られる。そこへ現れたのが、死んだはずの祖父。祖父は孫である妻の味方となり、親族一同にぴしゃりと言う。ええ話やった……。

平成の泣かせやの異名は伊達ではない、と思わせる本です。読んでも損はありません。
3.29(日)読了
8編からの短編集。すべて現代もの。
物語自体に繋がりはありませんが、テーマはすべて「家族」のようです。この辺は浅田氏の複雑な幼児期体験が色濃くあらわれているような気がします。

どの作品もまずまずで、大崩しているようなものはないのですが、浅田氏はやはり現代ものより時代物のほうがあっているように思います。現代もの以外に素晴らしい作品が多い、といった方が適切かもしれません。ときおりでてくる競馬物はおもしろいけど。

それにしても、浅田氏は短編をよく書いている。
近年の作家は長編から入る人が多いのですが、昔の作家はまず短編、力をつけてから長編というのがほとんどだったようです。
浅田氏は長編も短編も偏りなく書いている。そしてそのほとんどが水準以上の出来。凄いですね。
3.27(金)読了
8編の短編集。1960~1970年の東京を舞台に、高校生の写真屋の倅とその家族、友達を巡っての青春小説。

霞町とは現在の西麻布の旧名だそうです。西麻布といっても関西人の私にはよくわかりませんが。幼い頃は東京(というか神奈川)に住んでいたので、渋谷や新宿などにはよく行っていましたが、西麻布はどの辺だろう? イメージではフランス料理屋がたくさんあるような所なんだけど。

写真屋というのも最近ではあまり訊きなれない言葉です。戦後はGHQ関係などで大儲けできた時期もあったそうですが、現代のようにデジカメが当たり前の時代になると、フィルムを売ったり現像で稼いだりがほとんどではないでしょうか。
プロの写真家に撮影してもらうなど、七・五・三や結婚式などの格式ばった行事程度でしょう。お金もかかるし。

作品の中で、写真家の祖父や婿養子の父親も息子を写真屋にするつもりはあまりないようです。斜陽産業ということですね。
時代の変遷を感じることのできる一冊です。

3.25(水)読了
第36回オール読物推理小説新人賞受賞作。
東京池袋を舞台として、不良少年たちがワーワーする話。推理小説という印象はない。
あまりおもしろいとは思わなかった。これが新人賞を受賞? というのが正直な感想。体言止めを多用して独特の文章をつくりあげているのは評価できる。残念なのは内容。はっきりいって稚拙。ジュブナイルかと思った。

年齢層を10代から20代前半に絞ったのだろうか? 警察やヤクザを登場させてはいるが、リアリティがまったくない。内部事情を知らない人が書いたように思えて、白けてしまう。むしろ少年たちの奮闘一本で描ききったほうがよかったのではないか。

表題作の短編以外に3作品を収録しているが、飛び抜けた作品はなかった。どれも平凡で幼稚なストーリー。以前読んだ『夜を守る』という作品と内容もかぶっている。
いやぁ……ダメ出ししてるなぁ。そこまで悪い作品ではない、とフォロー。でも、この人の本をまた読みたいかと問われたら、答えはノー。もう結構。

3.23(月)読了
「やんごとなき」シリーズ。いつものように中世西洋での風俗等について書かれています。
この本を読むたびに思います、中国や西洋の君主や王様はやりたい放題だったのだなぁと。特にフランスだかイタリアだかの王族には頭の変な人が多々見受けられるが、それはワインを多飲していたせいだという説があるそうです。
当時は鉛の容器にワインや飲み物を容れて飲んでいたそうですが、その鉛がワインに溶け出して、人体に影響を与えていたのだそうです。その結果、通風その他の病気に罹り、頭が変になり、奇妙な行動をとるようになる、と。なるほどね。

「やんごとなき」シリーズは興味深く読んでいるが、何度も同じネタを使用するのが難点。カトリーヌ・ド・メディチや西太后などは毎回書かれている。こう何度も同じものを掲載していると、はっきり言って鬱陶しく感じる。
「ああ、またページ稼ぎか……」
みんなそう思うだろう。そこが一番残念。ぜひとも新ネタを入手して、よりクオリティの高い一冊を書き上げてもらいたい。


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