ヒコベエ（藤原正彦著）

4.19(木)読了
数学者で作家である藤原氏。論文、エッセイを中心に執筆活動をしていましたが、今回は初めて小説に挑戦。内容はというと、ほぼノンフィクションの自叙伝的作品。作中には父親である新田次郎氏、母親の藤原てい氏、幼い頃の満州からの壮絶な引き上げ記録や小学生の頃の生活風景などを面白おかしく描いています。

どこか「三丁目の夕日」を思い起こさせるような小説なので、団塊の世代やその少し上の世代は郷愁を感じることでしょう。新田次郎氏の「武士」としての教え、藤原てい氏のそれを揶揄する受け答えなど、現在の藤原正彦氏を型作る基礎の基礎がこの小説を読めば分かります。知恵遅れの同級生が登場したり、典型的なアカ教師が登場したり、セミを焼いて食べたりなど、現代っ子はカルチャーショックを受けるかもしれません。しかし、当時はそんなのは当たり前だったんですよね（私は知らないが）。

ボリューム、内容ともに充実していますので、お勧めの一冊です。全年齢に読んでもらいたい本です。